「ニッポンがそんな国になってくれたら。」
1867年。
「見て欲しいものがある。」とだけ言われ、渋々部屋にあがった。
そして友人が「それ」を読み上げたとき、慎太郎はあまりに驚き、声も出なかった。
友人が全てを読み上げた後、慎太郎はその友人の胸ぐらを掴み、泣きながらこう叫んだと言われている。
「ニッポンがそんな国になってくれたら…!!!」
その友人が書きあげた新しい「政治の仕組み」。
慎太郎は泣いた。友人のその一枚の紙で。
その友人の名は「坂本龍馬」。
後に誰もが知っている偉人となる。
みなさんにも、龍馬が掲げた「それ」を見てもらいたい。8か条でできている。
名前は ”船中八策”
後に明治政府の基本理念になる条文である。
‘船中八策’には、
「侍も商人も、そして百姓も、分け隔てなく政治に参加する。」ということが書かれている。
今でこそ、平等は当たり前。私たちがこの”船中八策”を読んでも、感動しないし、ましてや涙も流さない。
しかし当時にしたら龍馬が言っているこの”船中八策”。
どれだけ凄いことを言っているか。当時の百姓は決して口にしてはいけない、ましてや考えたこともない新しい世の中なのだ。
龍馬の周りにいた者も、涙を流し、そして激怒したという。
この条文がますます、坂本龍馬を危険にさらすことになるからだ。
当時の仕組みにすがっている者にとって、この”船中八策”は、決して都合のいいものではなかった。
彼らが生きている間に、この世界が実現することはなかった。
「よい社会」の本質
実は、この”船中八策”に書かれている世界は、西洋の哲学者が考えた「よい社会」の本質なのだ。
人間はそれまで長い間、殺し合いをしてきた。
人は周りからの干渉がない「自然状態」にあった時、支配者と奴隷者という不平等な関係に陥ってしまう。
これを回避するために、編み出した原理が「契約(ルール)」である。
全員が社会契約を結ぶことで、「自然的自由」をお互いに制限し、その代わりに「市民的自由」を手に入れる。
簡単に言うと、「みんなに好き勝手な自由が許されてしまうと、金を奪うことも人を殺すこともOKになってしまうから(自然的自由)、お互いの自由を守るために(市民的自由)ルールを設定しよう!」ということ。
ルソーの「社会契約論」である。
「法の下の平等」。全員が等しく自由に、自分の幸せを求められるような法律や制度を備えること。
今でこそ当たり前すぎて、特に何も思わないことだけれど。
ルソー、そして中岡慎太郎や坂本龍馬。彼らがどれだけ今私たちが生きている世界を望んだのだろう。
まとめ
普通選挙で、僕らの意思で政治家を決められること。
累進課税で、所得の格差を緩和することができること。
義務教育で、すべての人が教育を受けることができること。
だれもが比較的「納得」できる環境が整っているこの民主主義。
この制度は、2000年以上もの歳月をかけて人類が見出した「よい社会」の本質であり、先祖たちが涙を流すほど願った制度なのである。
「ニッポンがそんな国になってくれたら。」
私が生きているこの環境は幾万の先祖たちの願いの上に成り立っているということ。
感謝して、深く考えていきたい。改めて。
" わしが作りたい世の中は、上司も下司もない平らな世の中ぜよ。"
ー 坂本龍馬 ー
おわり
あとがき
冒頭の坂本龍馬の‘船中八策’の話。実はNHK大河ドラマ「龍馬伝」のワンシーンなんです。
中学校の時、社会科の先生が授業中にそのシーンを見してくれました。
当時はよく理解できなかったのですが
「おお、なんか男たちが….たかが一枚の紙を読んで号泣してるぞ….」
と、驚いたことを覚えています。
そのことをふと思い出して、どうしてももう一度見たかったので、「龍馬伝」を見返して探しまくりました。
そしてついに見つけた!! 43話にありました。
‘船中八策’を読み上げる「坂本龍馬」役の福山雅治さんと、それに泣く「中岡慎太郎」役の上川隆也さん。
二人のとてつもない名演技。もう一度言います。とてつもない名演技。もう一度言います。とてつもない名演技。文字おおきくしてもう一度言います。
とてつもない名演技。
さいっっこうのシーンですね。ほんとにカッコいい。
そのシーンを見たい方は僕に言ってください。
グッとくるものがありました。
僕が生きてるこの国の制度、改めて考えていかなければなぁ。そんなふうに思ってます。
以上、2か月ぶりに更新したブログでした。
ここまで読んでくれた方、ありがとう!!!